2025/10/09

ノベルティと商標使用との関連性ー日本実務との比較ー

商標 知的財産及び商業裁判所

  「おまけの景品だから大丈夫」と思っていたら、商標侵害であると訴えられた。そんな落とし穴があるのが、ノベルティをめぐる商標の世界である。日本では「BOSS事件[1]」として知られる裁判において、登録商標の指定商品「被服」に関する商標使用には該当せず、商標権の侵害は成立しないと判断された。では、台湾におけるノベルティの扱いはどうであろうか。本稿では、ノベルティが商標の使用に該当するかについ、日本と台湾における相違を整理し、実務上のポイントを紹介する。

 

  1. 日本実務の背景

 

  日本においてノベルティに商標を付して配布する行為は、原則として指定商品における商標使用には該当せず、広告的使用にとどまると整理されている。その民事訴訟の代表例がいわゆるBOSS事件であり、楽器メーカーが「BOSS」マーク入りTシャツを楽器の購入者に無償配布した事案につき、大阪地方裁判所は、⑴Tシャツは楽器宣伝広告媒体であり、独立の商品とはいえない、⑵市場に流通する蓋然性もなく[2]交換価値を持つ商取引の目的物ではないといった理由により、商標権侵害を否定した。この流れから、日本実務ではノベルティに商標を付して配布する行為は商標法2条3項8号の「広告的使用」に該当すると解され、ノベルティ自体の商品についての使用には該当しないとするのが通説である。もっとも、不使用取消審判の審決に対する行政訴訟において、商標的使用を要するとする立場と、形式的な使用で足りるとする立場が併存しており、実務上も使用認定の幅には一定の揺れが存在する。

 

  2. 台湾における判断枠組み

 

  台湾でも基本的な整理は日本と近く、ノベルティは広告的使用と評価されやすい傾向にある。ただし、台湾商標法第5条はTRIPS協定第16条1項を反映し、以下の三要件を充足するか否かが判断の基準とされている。

 

  (1)販売促進目的での使用

  (2)商標取引の過程における国内での使用

  (3)消費者による商標としての認識可能性

 

  3. 台湾の裁判例と実務の展開

 

  民事訴訟(使用否定例)

 

  台中郵便局事件[3]においては、台中郵便局が生命保険加入者に対して、他社から調達したコップを景品として配布していたが、当該コップが実際には模倣品であったため、商標権者が商標権の侵害を主張した。裁判所は、商標法上の「使用」とは、自己の商品・役務の出所表示のために行う積極的な標章使用を指すところ、本件では郵便局は保険加入者への景品として配布したに過ぎず、自社の役務「保険業務」を商標で表示する意図もなく、また当該商標を用いて自社の商品・役務を販売促進する目的もなかったため、「商標の使用」に該当せず、侵害の構成要件を欠くと判断した。つまり、ノベルティが模倣品であること自体は直ちに商標権侵害の成立を意味しないということであり、むしろ裁判所は「使用目的」「消費者の認識」の要素を重視しているといえる。

 

  登録商標の使用に関する注意事項(使用否定例)

 

  台湾知的財産局(TIPO)が公布した審査基準では、百貨店の周年慶で無料配布された風船に商標を印字した事例が示され、この場合、消費者はそれを風船のブランドではなく役務「百貨店」の広告と理解するため、商品「風船」における使用には該当せず、指定役務「百貨店」についての商標使用とされている。

 

  行政訴訟(使用肯定例)

 

  一方、ノベルティ自体の商品についての使用と認められるケースもある。典型例がVALENTINO事件[4]で、当該ブランドの高額購入者に対し当該ブランド「VALENTINO」マーク入り香水を贈与した行為につき、裁判所は「条件付贈与」と解釈し、単なる贈与とは異なり、販売促進機能を有するもの機能と評価した結果、香水という指定商品における商標使用と認定した。

 

  4. まとめ

 

  日本と台湾におけるノベルティの扱いは、いずれも基本的な結論として同じであり、原則として広告的使用に整理される。台湾の民事訴訟(権利侵害)と行政訴訟(権利維持)においては、基本的に商標法第5条の要件に基づいて判断が行われるが、行政訴訟において、例外的に使用が肯定される場合も存在し、台湾では条件付贈与のように販売促進との結びつきが強い場合には、ノベルティであってもノベルティ自体の商品についての使用と認められる可能性がある。

 

[1] 大阪地裁昭和62年8月26日判決。

[2] 近時は二次流通・ネット転売環境の変化もあり、ノベルティが独立の商品化するリスクは当時より高まっている。

[3] 知的財産裁判所99年度民商訴字第2号民事判決。

[4] 知的財産裁判所103年度行商訴字第128号行政判決。

TOP