2025/06/20

台湾知的財産局年次報告書2024年版の要点整理

特許・実用新案・意匠 商標

 先日に弊所のHPに掲載した台湾の知的財産権の出願概要(https://www.tsailee.com/News/Details?lc=jp&News_id=1600)に続き、2025年5月に台湾知的財産局が年次報告書(2024年の統計結果)を公表した。それに基づき、実務的な視点から、出願人にとって注目すべき統計情報を整理する。

 

 ■ 台湾知的財産局の審査体制と審査結果

 

1. 特許出願

 

 2024年における初審査における実体審査請求件数は45,847件で、前年(2023年)と比べて3.7%の増加となった。処理件数は45,445件で、3.6%の増加となっており、台湾知的財産局の審査キャパシティが着実に拡充されていることが確認できる。一方、実体審査請求件数が年々少しずつ増加していることに伴い、審査待ち件数は52,712件(+0.7%)でほぼ横ばいに推移しており、出願と審査のバランスが一定水準で保たれている。これは、一次審査通知までの平均時間が2023年の8.9か月から2024年には8.4か月へと短縮されたことからも推論できる。

 
 

 初審査における審査結果の内訳としては、特許査定が35,485件(全体の78.1%)、拒絶査定が9,095件(20.0%)、その他(取下げ、不受理など)が865件(1.9%)と、特許査定率は引き続き高い水準を維持している。

 
 

 初審査の拒絶理由通知の件数は46,488件で、前年に比べて0.5%減少。一回目の拒絶理由通知は41,824件、二回目以降を含む拒絶理由通知が4,664件、最後の拒絶理由通知が73件であった。

 

 特許出願における再審査請求件数は、2022年から2024年にかけて順に6,426件、6,538件、6,577件であり、2024年は2023年に比べて0.6%の増加となった。

 

 2024年における特許の再審査に関する一次審査通知までの平均期間は8.6か月、査定までの平均期間は11.7か月であり、2023年の10.1か月、13.1か月と比較して、審査期間の短縮が顕著に見られた。

 

 また、2021年から2023年における特許の初審査での拒絶処理件数は、それぞれ9,945件、9,250件、9,284件であった。これに対して再審査請求がなされた件数は、それぞれ5,811件、5,631件、5,626件であり、再審査請求率は順に58.4%、60.9%、60.6%と、上昇後に安定的な傾向を示している。

 

2. 実用新案登録出願

 

 2024年に15,943件の査定が完了し、平均審査期間は2.4か月と迅速に対応された。技術報告の作成件数は705件、平均作成期間は5.7か月であり、産業界のニーズに応えるスピード感を備えている。

 

3. 意匠登録出願

 

 初審査の処理件数が7,502件で、そのうち登録査定が6,609件(88.1%)、拒絶査定が583件(7.8%)、その他が310件(4.1%)という構成であった。一次審査通知までの平均期間は5.6か月、査定までの平均期間は6.6か月と安定しており、制度の信頼性が高い。

 

4. 商標登録出願

 

 近年商標登録出願件数の伸びが鈍化する中、知的財産局が既存の審査人員配置および業務改善により、一次審査通知までの平均期間は2023年の6.2か月から6.1か月に短縮された。

 
 

 ■ 多様な審査制度の整備と利用状況

 

 台湾知的財産局は、出願人の事業戦略に柔軟に対応するため、複数の審査加速制度・調整制度を設けている。なお、特許の早期審査制度の詳細については、弊所のHP(https://www.tsailee.com/Annc/Details?lc=jp&Annc_id=35)に掲載されている。

 

1. 特許加速審査(Accelerated Examination Program, AEP)

 

 2024年に391件の申請があり、出願人の国籍によって申請事由も大きく異なっている。例えば、226件が外国での登録済み案件を申請事由としており、そのうち約97%が外国籍出願人であった。また、106件が商業的必要性に基づく申請であり、そのうち約77%が台湾籍出願人であった。2024年におけるAEP申請に関する一次審査通知までの平均期間は41日から75日、査定までの平均期間は148日から213日である。出願人の国籍別では、台湾籍出願人が135件、日本籍出願人が69件、米国籍出願人が62件と、外国籍出願人の活用も進んでいる。

 

2. 特許審査ハイウェイ(PPH)

 

 現在、我が国は、米国、日本、スペイン、韓国、ポーランド、およびカナダとPPH(特許審査ハイウェイ)協力計画を実施している。2024年におけるPPH申請件数は合計944件であり、その中でも台湾・米国間のPPHが466件、台湾・日本間のPPHが453件と、両者が大半を占めている。2024年における台湾・日本間のPPHに関する一次審査通知までの平均期間は41日、査定までの平均期間は119日である。

 

3. PPH協定を活用した特許審査支援制度(TW-Support Using the PPH Agreement, TW-SUPA)

 

 TW-SUPA制度は、我が国の発明特許出願を第一国出願とし、その後、PPH協定締結国に対応する外国出願を行った場合に、所定の書類を提出することで、台湾における当該出願の加速審査を申請できる制度である。外国出願の出願日から6か月以内であれば申請が可能である。

 

 2024年には、TW-SUPA案件は22件にとどまり、制度の利用件数としては限定的であった。しかしながら、処理スピードの面では顕著な成果が見られた。平均して0.93か月で一次審査通知が送達され、査定まで約4.0か月を要した。これらの数値は、台湾知的財産局の高い審査効率を示しており、TW-SUPAは早期権利化を目指す出願人にとって依然として有力な手段となっている。

 

4. スタートアップ業界向けの積極審査制度

 

 ベンチャー企業やスタートアップの早期保護支援を目的としており、2024年には42社から66件の申請があり、平均審査期間は70.3日であった。

 

5. 遅延審査制度

 

 台湾知的財産局では、出願人の特許戦略やポートフォリオ構築のニーズに応えるため、遅延審査制度を導入している。

 

 本制度は、特許出願に対し、一定期間実体審査の開始を遅らせることを可能とするものであり、審査請求のタイミングを柔軟に調整できる利点がある。これにより、出願人は審査に係る費用負担の時期を最適化し、他国出願や事業展開との整合性を図ることができる。

 

(1) 特許出願

 

 台湾知的財産局は2015年4月1日より、特許に対する遅延審査の申請を受け付けている。2024年末までに、累計1,646件の申請が受理されている。

 

(2) 意匠登録出願

 

 台湾では、2023年9月1日以降、意匠登録出願において実体審査の遅延請求が可能な期間が、「優先日から起算して1年以内」から「出願日から起算して1年以内」に変更された。ただし、一次審査通知を受領する前に限られており、2024年の一次審査通知までの平均時間は5.6か月となっている。本制度の2023年9月1日から2024年末までの受理件数は399件であった。日本の秘密意匠制度では、登録意匠の「公開」を意匠権設定登録時から最大3年間延期することができるのに対し、台湾では「実体審査そのもの」が延期される制度であるため、制度の目的と運用には明確な違いがある。なお、日本の出願において秘密意匠制度を利用している場合は、台湾出願における審査遅延制度の活用も要検討である。

 

6. 特許の再審査加速審査制度(Accelerated Examination Program for Reexamination, AEPRe)

 

 本制度は、初審査で拒絶された発明に係る請求項を削除し、拒絶理由が通知されなかった発明に係る請求項を独立項とすることで、特許要件を満たすその独立項の範囲で特許権を迅速に付与するものである。2024年末までに14件が申請され、うち10件が平均15日以内に審査結果を得ており、極めて効率的である。

 

7. 商標登録出願

 

 商標の審査制度も改善が進められている。2024年5月に導入された商標登録出願の加速審査制度では、131件の申請があり、要件を満たした出願では平均3.5日で一次審査通知が送達された。

 

 また、ファストトラック制度(平面商標の電子出願において、指定商品・役務名がシステムの参考名称と完全に一致する場合)は出願件数全体の71.5%に適用され、通常の出願と比較して平均で2.05か月の審査短縮が実現された。

 

 ■ おわり

 

 台湾では出願人の利便性向上に向けた制度整備も進んでおり、目的に応じて柔軟に活用できる仕組みが整っています。出願時に制度を活用することで、効率的な権利化と戦略的な管理が可能です。

 

 弊所では、台湾の実務で使える便利な制度や最新動向を常に把握し、積極的に情報を共有しております。台湾での知的財産権の出願をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 【著作物の引用】

 出典:経済部知的財産局年次報告書2024年版

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